2020.08.03
オフィスビルで省エネ対策を行う際に抑えるべきポイントを紹介
気候変動の原因となっている二酸化炭素は、オフィスビルでも排出されている温室効果ガスです。日本政府が掲げた「2030年度までに温室効果ガス排出量を一定量削減する目標」を達成するためには、オフィスビルの省エネ対策が欠かせません。本記事では、オフィスビルで省エネ対策を行う際に抑えるべきポイントをご紹介します。
こんな方におすすめです。
・企業の経営幹部の方
・施設担当で省エネ対策を任されている方
今回は、照明・空調・暖房に分けた取り組みや、時間帯別に気に掛けるポイントを解説していきます。
01.オフィスビルで省エネする目的
地球温暖化の原因として挙げられているのが温室効果ガスです。温室効果ガスには二酸化炭素・メタン・一酸化二窒素・フロン類等など複数の種類がありますが、二酸化炭素の割合が半数以上を占めている状態です。
オフィスビルは温室効果ガスのなかでも特に二酸化炭素を多く排出します。そのため、オフィスビルの稼動も地球温暖化の一端を担っていると考えられます。
■日本政府が推進する「COOL CHOICE(クールチョイス)」
地球温暖化は世界規模で深刻に受け止められている現象で、2015年には日本政府が温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減する目標を掲げました。オフィスビルは「業務その他部門」に分類されており、2030年度のエネルギー起源CO2排出量の目安は168百万トンに設定されています。
業務その他部門(オフィスビル含む)のエネルギー起源CO2排出量推移と目標 (単位:百万トン) | ||
2005年度 | 2013年度 | 2030年度(目標) |
239 | 279 | 168 |
日本政府は「2013年度比で26%削減」を達成するために国民運動「COOL CHOICE(クールチョイス)」を展開。オフィスビルでも省エネを意識した活動が促されています。
02.オフィスビルの省エネの取り組み内容
この項目では、オフィスビルで実践できる省エネの取り組み内容を解説します。オフィスビル(レンタブル比60%以上【熱源有】)で見ると、主なエネルギー消費構造は下記の通りです。
オフィスビルの用途別エネルギー消費BEST5 | |
熱源機器(冷凍機・冷水機・ボイラーなど) | 26% |
照明(照明器具) | 21.3% |
コンセント(OA機器など) | 21.1% |
空気搬送(空調機など) | 9.4% |
熱源補機(冷却水ポンプ、冷却塔など) | 5.2% |
上記の数値を確認すると照明やコンセント、空調が消費するエネルギーの割合は大きいことが分かります。つまり、エネルギー消費が大きい分野の対策を講じることで、高い省エネ効果が期待できるのです。
それに伴い、今回は照明・空調・その他に分けた省エネ対策をご紹介します。オフィスビル内で働く人々が自ら率先し、効率の高い状態で運用する取り組み内容と、設備の改修や効率的な機器を導入する取り組みに分けた内容を見てみましょう。
02.1照明
照明に関する取り組みは次の通りです。オフィスビルの中でも21.3%という高いエネルギー消費を占める分野のため、ぜひポイントを押さえてください。
■使用者や運用による取り組み
・照明基準の決定・管理
・不使用時や昼休みに消灯
・外灯や季節に合わせた照明時間
・照明の間引き・窓際照明の消灯
・灯具の清掃や古いランプの交換
■設備の改修や効率的な機器の導入による取り組み
・反射板の導入
・照明器具の取り付け位置を変更
・照明器具の安定器をインバータタイプに変更
・照明区分回路を細分化しスイッチを分ける
・LED照明など高効率照明器具に取り替え
・タスク・アンビエント照明の導入
・トイレや倉庫、廊下など人感センサーの採用
特にLED照明に取り替える省エネ対策は、エネルギー消費や二酸化炭素排出量の大きな削減が見込めます。各企業が積極的に検討している省エネ対策です。
02.2空調
空調に関する取り組みは次の通りです。空調はオフィスビルの中で9.4%を占めるエネルギー消費が見られます。
■使用者や運用による取り組み
・政府推奨温度で室内温度を適正に調整
・中間期・冬季は外気冷房システムを実行
・倉庫や給湯室など不使用時の換気の停止
・室外機に日陰を作る、または散水
・室内機フィルター・室外機フィンの清掃
■設備の改修や効率的な機器の導入による取り組み
・送風機、ポンプにインバータを導入
・CO2センサーなど外気導入制御を採用
・EMS、デマンドコントローラーの導入
・高効率空調機の導入
・全熱交換器を採用
高効率空調機やインバータ制御機器の導入は省エネだけではなくコスト削減にもつながります。デマンドコントローラーは電力の「見える化」をはかれるシステムのため、非効率な電力を発見できます。
02.3熱源
熱源に関する取り組みは次の通りです。熱源は熱源機器である冷凍機・冷水機・ボイラーや、熱源補機である冷却水ポンプ・冷却塔などが該当します。オフィスビルの中で最も大きい31.2%という高いエネルギー消費を占める分野です。
■使用者や運用による取り組み
・冷温水循環ポンプを終業時刻に停止
・冷凍機の冷水出口温度の適正化
・冷凍機の冷却出口温度の適正化
・ボイラー・燃焼機器の空気比調整
・ボイラーブローの適正化や水質管理
・ボイラーの蒸気圧力の設定値を低減
・熱搬送ポンプを負荷に応じた運転台数に調整
・熱源機器や熱源補機の清掃
■設備の改修や効率的な機器の導入による取り組み
・フリークーリングシステムの導入
・高効率な熱源機器や熱源補機の導入
ボイラーなどの熱源は、経年劣化によるエネルギー消費やコスト負担が無視できない問題です。適切な機器の導入を行うことで大幅な省エネやコスト削減が見込めます。
02.4その他
その他に関する取り組みは給湯・給水・エレベーター・エスカレーターに着目してご紹介します。
■使用者や運用による取り組み
・給湯タンク温度の適正化
・使用量が減少時に給湯の循環ポンプを停止
・冬季以外は給湯を停止
・給湯器内のスケール除去
・給水の量や圧力の適正化
・排水の再利用
・使用頻度が少ない階数へのエレベーター停止を減らす
■設備の改修や効率的な機器の導入による取り組み
・節水コマ・節水器具を採用
・トイレに擬音装置を導入
・給湯を局所式に変更
・エスカレーターに自動運転装置を導入
03.時間帯別に気に掛けるポイント
オフィスビルでは、時間帯別で省エネ対策を講じることができます。始業前・操業時間・残業時間・非使用時間に分けたポイントを見てみましょう。
03.1始業前
始業前は多くの人が出勤するため、照明やコンセントの負荷が大きくなる時間帯です。空調の開始にも多くのエネルギーを消費します。特に冬はエネルギー消費量が多くなる季節です。
・運転開始時刻を季節に応じて変更
・空調運転開始時の外気をカットし負担を軽減
・立ち上がりの早い貫流ボイラー等に交換して運転開始時間を短縮
・ナイトパージを実行し空調負荷を軽減
03.2操業時間
操業時間帯は人々が活動的に働くため、1日の中でも多くのエネルギーを消費します。空調が48%、照明が24%※を占めるので、この分野の省エネ対策を実施することが大切です。特に、日本政府が推奨している室内温度を意識しましょう。(夏:28度、冬:20度)
・夏季にクールビズを取り入れる
・季節の負荷の変化に応じた熱源・空調の運転管理
・必要最小限の外気取り入れ
・室内温度が政府推奨温度になるように空調を調整する
・昼休みに一部または全部の照明を消灯
・業務終了時に東側の窓のブラインドを閉め翌朝の日射負荷を軽減
日本政府が推奨している室内温度は冷房を28度、暖房を20度に設定するのではなく、冷暖房を稼働後の室内温度が先述した温度になるように設定するという意味です。
※参照元:夏季の節電メニュー|経済産業省
03.3残業時間
残業時間はエネルギー消費が緩やかに下降する時間帯です。必要な場所の機械や機器だけを稼働させましょう。
・共用部は一部だけ点灯
・室内は在室している部分だけ点灯
・使用しない機器の電源を切る
・給湯温水器や洗浄便器を夜間モードに設定
・終了時間前に冷暖房の熱源を停止し、装置内の熱を有効利用
・退出時間が近づいたら冷暖房を送風運転
03.4非使用時間
夜間や休日など非使用時間は操業時間に比べると一気にエネルギー消費が減少します。しかし、最低限維持・供給されるエネルギーもあるため、非使用時間の省エネ対策も大切です。
・夜間巡回時に不要な照明・空調の有無をチェック
・エレベーターの夜間運転台数を減らす
・自動販売機をタイマー制御
・変換器の負荷を集約し稼働台数を減らす
04.まとめ
本記事では、オフィスビルでできる省エネ対策をご紹介しました。オフィスビルでは照明や空調、熱源などに分けた対策が講じられます。省エネ対策は今すぐに実行できる対策から、設備の改修や効率的な機器の導入によって高い効果を得られる対策に分けられます。
また、オフィスビルの省エネ対策は始業前・操業時間・残業時間・非使用時間など、時間帯別でも気に掛けることでさらなる省エネ効果が期待できます。オフィスビルを含む部門の「2030年に168百万トンというエネルギー起源CO2排出量目標」を達成するためにも、積極的に省エネ対策を実行していきましょう。
エスコでは、ビルを対象とした省エネコンサルティングサービスを実施しています。設備改修を伴う規模の大きい省エネ施策を実施する際にはエスコにご相談ください。
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