2024.05.27

オフィスビルで省エネ対策をおこなう際に押さえるべきポイントを紹介

気候変動の原因となっている二酸化炭素は、オフィスビルでも排出されている温室効果ガスです。日本政府が掲げた「2030年度までに温室効果ガス排出量を一定量削減する目標」を達成するためには、オフィスビルの省エネ対策や環境配慮への取り組みが欠かせません。

本記事では、オフィスビルで省エネ対策をおこなう際に押さえるべき基本ポイントから、改修ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の実現、IoTやロボットを活用したスマートビル化、CASBEEやDBJグリーン認証・GRESBなどの環境認証取得に向けたアプローチまで詳しくご紹介します。

こんな方におすすめです

  • 企業の経営幹部の方
  • 施設担当で省エネ対策や改修・ESG投資を任されている方
  • ビルオーナーの方

1. オフィスの省エネ対策とは?

オフィスの省エネ対策とは、オフィスで使用される機器(エアコン・照明・OA機器(オフィスオートメーション機器))の消費エネルギーを抑える取り組みのことです。省エネ対策を進めることで、光熱費などのコスト削減だけでなく、企業イメージや不動産価値の向上といった大きなメリットが得られます。


一般財団法人省エネルギーセンターの情報によると、オフィスビルの部門別エネルギー消費のうち、52.6%をオフィス専有スペースが占めています。次いで、オフィスフロアのトイレやエレベーターホールなどの共有スペースが19.4%となっています。
続いて、オフィスビルで省エネを推進する目的と、近年のビル管理における最新トピックをご紹介します。

オフィスの節電方法について、こちらの記事もあわせてご覧ください
今すぐできる節電方法

2. オフィスビルで省エネする目的

地球温暖化の原因として挙げられている温室効果ガスのうち、オフィスビルからは特に二酸化炭素(CO2)が多く排出されています。
そのため、ビルオーナーやテナント企業にとって、ビルの省エネ化・脱炭素化は今や免れない重要な経営課題となっています。

2.1日本政府が推進する「COOL CHOICE(クールチョイス)」

日本政府は温室効果ガスの排出量を2013年度比で大幅削減する目標を掲げています。オフィスビルが含まれる「業務その他部門」では、2030年度のエネルギー起源CO2排出目標として168百万トン(大幅な削減)が設定されており、国民運動「COOL CHOICE(クールチョイス)」などを通じて省エネ活動が強く推奨されています。
参照:環境省

業務その他部門(オフィスビル含む)のエネルギー起源CO2排出量推移と目標 (単位:百万トン)
2005年度 2013年度 2030年度(目標)
239 279 168

 

2.2 不動産価値を高める環境認証(CASBEE・DBJグリーン認証・GRESB)

現代のオフィスビル経営においては、単なる節電にとどまらず、ESG投資やサステナビリティの観点から環境性能を客観的に証明することが求められています。

  • CASBEE(建築環境総合性能評価システム):建物の省エネルギー性や環境負荷の少なさ、快適性を総合的に評価する指標
    参照:一般社団法人 日本サステナブル建築協会
  • DBJ Green Building認証(DBJグリーン認証):環境・社会への配慮がなされた不動産(「Smart Building」)を評価・認証する制度
    参照:一般財団法人 日本不動産研究所
  • GRESB(グレスブ):不動産会社やファンドのESG(環境・社会・ガバナンス)配慮を評価するグローバルなベンチマーク

これらの環境認証を取得・保持することにより、環境意識の高いテナント企業の誘致や、ビル全体の資産価値向上・維持につながります。

3. オフィスの種類(自社ビル・テナント)によるアプローチの違い

オフィスの省エネ対策は、オフィスの種類によってできる施策が異なります。ここでは、自社ビル・テナントオフィスにて実施できるオフィスの省エネ対策をご紹介します。

3.1 自社ビル

会社が所有権を持つ自社ビルの場合、省エネ施策の自由度が高く、高効率設備への更新や、ビル全体の「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」化・改修ZEBといった大規模な先進投資も自社の判断で実行可能です。

3.2 テナントオフィス

賃貸契約で入居するテナントオフィスの場合は、自社の専有部内(照明の間引き、PC・OA機器の省エネ設定、運用方法の見直し等)でできる施策が中心となります。ただし、近年はオーナー側とテナント側が協働して省エネ改修を進める「グリーン借家契約(グリーンリース)」などの取り組みも広がっています。

4. オフィスビルの省エネ・スマート化の具体的な取り組み

オフィスビル(熱源有)における主なエネルギー消費構造(熱源機器26%、照明21.3%、コンセント21.1%、空気搬送9.4%など)を踏まえ、効果的な省エネ施策・最新アプローチを解説します。

オフィスビルの用途別エネルギー消費BEST5
熱源機器(冷凍機・冷水機・ボイラーなど) 26%
照明(照明器具) 21.3%
コンセント(OA機器など) 21.1%
空気搬送(空調機など) 9.4%
熱源補機(冷却水ポンプ、冷却塔など) 5.2%

参照元:オフィスビルの省エネルギー|省エネルギーセンター

 

4.1 照明

使用者や運用による取り組み

設備の改修や効率的な機器の導入による取り組み

照明基準の決定・管理 反射板の導入
不使用時や昼休みに消灯 照明器具の取り付け位置を変更
外灯を含め、季節に合わせた照明時間 照明器具の安定器をインバータタイプに変更
照明の間引き・窓際照明の消灯 照明区分回路を細分化しスイッチを分ける
灯具の清掃や古いランプの交換 LED照明など高効率照明器具に取り替え
  タスク・アンビエント照明の導入
  トイレや倉庫、廊下など人感センサーの採用

LED照明への切り替え、人感センサー・タスクアンビエント照明の導入により、大幅な消費電力削減が可能です。

4.2 空調設備の省エネ・コスト削減アプローチ

空調の省エネは、オフィス全体の消費電力削減に直結します。日々の運用ルールの徹底と、最新設備の導入を組み合わせることで高い効果を発揮します。

使用者や運用による取り組み

設備の改修や効率的な機器の導入による取り組み

政府推奨温度で室内温度を適正に調整 送風機、ポンプにインバータを導入
中間期・冬季は外気冷房システムを実行 CO2センサーなど外気導入制御を採用
倉庫や給湯室など不使用時の換気の停止 EMS、デマンドコントローラーの導入
室外機に日陰を作る、または散水 高効率空調機の導入
室内機フィルター・室外機フィンの清掃 全熱交換器を採用

 

4.3 熱源設備の省エネ・運用最適化のポイント

冷凍機やボイラーといった熱源設備も、細かな設定温度・圧力の見直しや高効率機器への入れ替えによって、大きな省エネ効果が期待できます。

使用者や運用による取り組み

設備の改修や効率的な機器の導入による取り組み

冷温水循環ポンプを終業時刻に停止 フリークーリングシステムの導入
冷凍機の冷水出口温度の適正化 高効率な熱源機器や熱源補機の導入
ボイラー・燃焼機器の空気比調整  
ボイラーブローの適正化や水質管理  
ボイラーの蒸気圧力の設定値を低減  
熱搬送ポンプを負荷に応じた運転台数に調整  
熱源機器や熱源補機の清掃  

ボイラーなどの熱源は、経年劣化によるエネルギー消費やコスト負担が無視できない問題です。適切な機器の導入を行うことで大幅な省エネやコスト削減が見込めます。

4.4 OA機器

コンセントに接続するOA機器(オフィスオートメーション機器)に関する取り組みは以下のとおりです。OA機器は、オフィスビルの中で21.1%のエネルギー消費となってます。

使用者や運用による取り組み

設備の改修や効率的な機器の導入による取り組み

複合機器の集約化 省エネルギー型の機器を導入
複合機の主電源をオフ、コンセントを抜いて待機電力を節約 デスクトップパソコンからノートパソコンへの切り替え
複合機の省エネモードを設定 複合機の台数制限
パソコンの省エネモードを設定  
パソコンのディスプレイの明るさを調整  
パソコン未使用時の待機電力を節約  

4.5 クールビズの推奨

夏のクールビズ、冬のウォームビズも環境省から推奨されています。具体的な取り組みは、以下のとおりです。

クールビズに関する取り組み

ウォームビズに関する取り組み

うちわや扇子を利用して体感温度を下げる デスクワーク中に羽織れる上着を用意
ブラインドや断熱シートで室温上昇をストップ 休憩時にはあたたかいものを飲む
夏らしいアップスタイルで涼しく過ごす ひざ掛けなどを活用
冷感グッズを使用して快適に過ごす 機能性インナー(肌着)などを活用
薄手の素材や快適に過ごせる軽装で過ごす 移動時には積極的に階段を使う
  血行をよくするストレッチなどをおこなう

4.6 その他

その他に関する取り組みは給湯・給水・エレベーター・エスカレーターに着目してご紹介します。

使用者や運用による取り組み

設備の改修や効率的な機器の導入による取り組み

給湯タンク温度の適正化 節水コマ・節水器具を採用
使用量が減少時に給湯の循環ポンプを停止 トイレに擬音装置を導入
冬季以外は給湯を停止 給湯を局所式に変更
給湯器内のスケール除去 エスカレーターに自動運転装置を導入 
給水の量や圧力の適正化  
排水の再利用  
使用頻度が少ない階数へのエレベーター停止を減らす  

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5. 時間帯別に気にかけるポイント

オフィスビルでは、時間帯別で省エネ対策を講じることができます。始業前・営業時間・残業時間・非使用時間に分けたポイントを見てみましょう。

 

5.1 始業前

始業前は多くの人が出勤するため、照明やコンセントの負荷が大きくなる時間帯です。空調の開始にも多くのエネルギーを消費します。特に冬はエネルギー消費量が多くなる季節です。

  • 運転開始時刻を季節に応じて変更
  • 空調運転開始時の外気をカットし負担を軽減
  • 立ち上がりの早い貫流ボイラー等に交換して運転開始時間を短縮
  • ナイトパージを実行し空調負荷を軽減

5.2 営業時間

営業時間帯は人々が活動的に働くため、1日の中でも多くのエネルギーを消費します。空調が48%、照明が24%※を占めるので、この分野の省エネ対策を実施することが大切です。特に、日本政府が推奨している室内温度を意識しましょう。(夏:28度、冬:20度)

  • 夏季にクールビズを取り入れる
  • 季節の負荷の変化に応じた熱源・空調の運転管理
  • 必要最小限の外気取り入れ
  • 室内温度が政府推奨温度になるように空調を調整する
  • 昼休みに一部または全部の照明を消灯
  • 業務終了時に東側の窓のブラインドを閉め翌朝の日射負荷を軽減

日本政府が推奨している室内温度は冷房を28度、暖房を20度に設定するのではなく、冷暖房を稼働後の室内温度が先述した温度になるように設定するという意味です。

参照元:夏季の節電メニュー|経済産業省

5.3 残業時間

残業時間はエネルギー消費が緩やかに下降する時間帯です。必要な場所の機械や機器だけを稼働させましょう。

  • 共用部は一部だけ点灯
  • 室内は在室している部分だけ点灯
  • 使用しない機器の電源を切る
  • 給湯温水器や洗浄便器を夜間モードに設定
  • 終了時間前に冷暖房の熱源を停止し、装置内の熱を有効利用
  • 退出時間が近づいたら冷暖房を送風運転

5.4 非使用時間

夜間や休日など非使用時間は営業時間に比べると一気にエネルギー消費が減少します。しかし、最低限維持・供給されるエネルギーもあるため、非使用時間の省エネ対策も大切です。

  • 夜間巡回時に不要な照明・空調の有無をチェック
  • エレベーターの夜間運転台数を減らす
  • 自動販売機をタイマー制御
  • 変換器の負荷を集約し稼働台数を減らす

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6. オフィスの省エネ対策の注意点

オフィスでの省エネ対策をおこなう際、無理なく実践することが大切です。無理に省エネを実施することで社員の体調不良やストレス、生産性の低下などを招いてしまっては意味がありません。

照明・空調・熱源・OA機器・クールビズの推奨・その他の省エネ対策などをご紹介しましたが、まずは小さな目標を立ててできることから始めてみましょう。いきなり大きな変化を取り入れるのではなく、徐々に省エネを意識づけることが大切です。

また、オフィスの省エネ対策を始める際は社員に省エネ対策の計画を説明しておくことも大切です。省エネの実現には社員の協力が必要不可欠であるため、無理なく実践してみてください。

7. まとめ

本記事では、オフィスビルでできる省エネ対策をご紹介しました。オフィスビルでは照明や空調、熱源などに分けた対策が講じられます。省エネ対策は今すぐに実行できる対策から、設備の改修や効率的な機器の導入によって高い効果を得られる対策に分けられます。

また、オフィスビルの省エネ対策は始業前・営業時間・残業時間・非使用時間など、時間帯別でも気にかけることでさらなる省エネ効果が期待できます。オフィスビルを含む部門の「2030年に168百万トンというエネルギー起源CO2排出量目標」を達成するためにも、積極的に省エネ対策を実行していきましょう。

エスコでは、ビルを対象とした省エネコンサルティングサービスを実施しています。設備改修をともなう規模の大きい省エネ施策を実施する際にはエスコにご相談ください。

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エスコ編集部

この記事の執筆

エスコ編集部(株式会社エスコ)

電気設備・省エネ設備の企画から施工・保守までを一貫して手がける株式会社エスコのコンテンツ編集部です。電気主任技術者や省エネ診断士など、社内の専門資格を持つスタッフの知見をもとに、法令改正や技術動向を踏まえた正確でわかりやすい情報発信を心がけています。

監修体制:電気主任技術者・省エネ診断士等の有資格スタッフが内容を確認のうえ公開しています。

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