2020.08.31

BCP対策のポイントや事例、設備について紹介

 

BCP対策は緊急事態の際に事業継続を図ったり早期の復旧を目指したりするものです。対策内容を決める際は、災害時の状況を想定しておく必要があります。この記事では企業におけるBCP対策のポイントや事例についてご紹介します。

01.BCP(事業継続計画)対策とは

BCP対策とは、災害や事故、事件などが起きた場合に必要となる対応です。

01.1事業継続計画(BCP)の重要性

BCPとはBusiness Continuity Plan(事業継続計画)のことで、災害時に企業がとるべきリスクマネジメント対策のことです。

企業が直面しうる「災害」にはさまざまなものがあります。
自然災害
感染症
テロ
火災
有害物質の流出
リコール
システム障害
セキュリティ侵害
法令違反
病気・けがなどによる社員、経営陣の離脱

BCP対策では、災害時に人命や資産を守り、事業の継続または早期復旧を目指すために必要となる事前準備や緊急時に事業を継続する方法を定めます。

01.2事業継続計画(BCP)策定のメリット

企業がBCPを策定すると、緊急時に役立つのはもちろん平常時には以下のようなメリットがあります。

経営の実態把握:在庫管理、顧客管理など事業の明確化
金銭面のメリット:助成金や補助金、金利の優遇・融資、保険の優遇など
対外的なイメージ向上:取引先や社外などからの信用向上
協業による事業継続性向上:BCP策定に複数の企業が連携すると、サプライチェーン強化、同業者、地域的などとの協力体制構築などが可能

01.3BCPで検討すべき項目

自社でBCPを策定する場合は、以下の手順で検討を行います。

1. 基本方針の立案

経営理念や企業のビジョンなど、企業のスタンスなどからBCPの目的を整理します。BCP策定のねらいは「人命の安全」「従業員の雇用の維持」「地域経済の活力を維持供給責任を果たす」など一般的なもののほか、企業ごとにさまざまです。

例)医療系製造業の場合:「供給責任を果たす」など

2. 重要商品の検討

災害時はリソースが限られるため、平常時と同じようにすべての商品やサービスを提供するのは難しいです。基本方針をもとに最も重要な商品またはサービスをひとつ選んでおきましょう。

3. 被害状況の確認

災害により工場が操業停止になったり、店舗が営業できなかったりした場合に自社の「人」「物」「金」「情報」にどのような影響が考えられるかを整理します。

例)大地震の場合:インフラ面としてライフライン、情報通信、鉄道が利用不可、道路は一部使用可能。自社では従業員が一部負傷、重要な書類が、データが復旧不能など。

4. 事前対策の実施

事前対策の実施状況を把握したうえで、実際に対応が検討できている場合は「誰が」「何を」「いつまでに」対策するかを明確化します。

自社だけで対応しきれない場合は、近隣企業や取引先、関連会社などと連携を図ることも可能です。

例)大地震の場合
(人)安否確認ルールの整備
(物)代替調達先、生産先の確保
(物)機器、設備の固定
(金)緊急用事業資金の確保
(情報)重要データの保管
(情報)情報収集、情報伝達手段の確保

5. 緊急時の体制の整備

まず状況にあわせて全社の対応および意思決定ができるよう統括責任者を定めましょう。念のため、代理責任者は複数名定めます。

02.BCP対策とは

BCP対策のひとつに電源の確保があります。非常時に電気を使うためには「発電機を用いる」「平常時に電気を貯めておく蓄電池を使う」の2通りが考えられます。

02.1災害時における電源の確保

災害時には電気ガス水道などのライフラインが止まることが想定されます。しかし、人命保護や日常生活、事業の継続、復旧には電力が必要です。

一般的に大規模震災の場合、電気の復旧にかかる日数は約1週間といわれています。そのため、電源に関わるBCP対策としては、1週間分の照明の確保や通信手段の維持を考慮しておく必要があるのです。

02.2非常用発電機の導入

BCP対策として、工場や学校、銀行などでは非常用発電機を持っている場合があります。

非常用電源として使えるものには、以下のような種類があります。
燃料式発電機(石油式、ガス式)
産業用蓄電池
EV(電気自動車)を蓄電池として活用
太陽光発電
太陽光発電+蓄電池+LPガス(ハイブリッド電源)

02.3非常用発電機の保安点検

非常電源を保持していても、非常時に想定どおりに稼働しなければ意味がありません。もしもの時に安心して非常用発電機を使用するためには、定期的な点検は必要不可欠です。

非常用発電機は、電気事業法、消防法、建築基準法などの法令によって点検が定められています。
・電気事業法:すべての電気工作物(常用、非常用発電機を含む)について月次、年次など保安規定をもとにした点検義務
・消防法:機器点検(6ヶ月ごと)、総合点検(1年ごと)の実施、報告義務
・建築基準法:特定行政庁の定めに基づく期間、内容での点検、報告義務

エスコの非常用発電機の点検サービスはこちら
https://www.esco-co.jp/service/emergency/

02.4蓄電池の導入

電池には、放電のみを行う使い捨ての一次電池と、放電と充電の両方に対応する二次電池があります。

蓄電池とは、二次電池を用いて発電された電気を事前に貯めておく仕組み。蓄電池を電力確保のBCP対策とすることも可能です。

蓄電池は、家庭用太陽光発電システムと連携に一般家庭に備えられている場合もあります。
家庭用の場合は容量が約1kWh~15kWh、サイクル数が約3,500回、寿命が約10年です。

産業用の場合は容量が約十数kWh〜20kWhなどさまざまで、サイクル数は約8,000回を超える長寿命タイプもあります。

03.BCPのためにすべきこと

事業用の非常用発電機はさまざまな性能の違いがあり、導入や維持に関わるコストさまざまです。導入時に考慮すべきポイントを整理しましょう。

03.1電力の用途を明確にする

非常時は通常と同じだけの電力を確保する必要はありません。BCP対策の策定時に稼働させると決めたシステムを動かすのに必要な機器を選定します。

03.2必要とする電力を明確にする

非常時に使用する機器に必要な電力を見積もります。「ノートパソコンを何台稼働させるか」「その際に必要な電力はいくらか」などを具体的な数字で算出します。

ただし、電子機器は初動時に最も電力を消費するため、通常よりも多めに見積もることが重要です。また、精密機器を扱う場合には、周波数を安定させるインバーター機能があると便利です。

03.3設置場所を決定する

必要な電力をもとに導入する発電機を選びます。

発電機として自家消費型太陽光発電を設置することも可能です。しかし一般的には発電機を据え置く場所の近くに燃料の保管場所を設けると使いやすくなります。

加えて、稼働した場合近隣の騒音にならないかなどの配慮が必要です。使用する機器によっては携帯できる発電機が便利な場合もあります。

03.4取得方法を決定する

発電機は購入するほか、レンタルやリースも可能です。それぞれコストが変わるため目的などに基づき見積もりましょう。なお、各自治体などで助成を行っている場合もあります。

例)平成31年度 災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金

03.4稼働テストを行う

法律にも定められているとおりですが、点検を業者任せにしているといざというときにどう使っていいか分からなくなるかもしれません。ふだんから定期的な演習や訓練が必要です。

04.BCP対策実績

各施設ごとのBPC対策を行うにあたり、想定される状況や、対応例についてご紹介します。

04.1百貨店・デパート

災害が起きた場合は、商品や陳列棚が倒れて買い物客や従業員がけがをするリスクがあります。また、避難時の転倒や混乱を防ぐことも重要です。

日用品を扱う場合には早急な営業再開と完全復旧が求められます。店舗内や電源が使えない場合には、重要商品を検討しておつりが出にくくなるように価格を調整したり、販売場所やレジを使わずに販売したりなど、営業方法の工夫が求められます。

04.2病院

災害発生から3日が最も混乱しやすい傾向があります。建物が損壊し人や設備が確保できないなかで治療を行い、外来・入院の患者の安全を確保しなければなりません。また、帰宅できない外来患者が院内にとどまったり、傷病者が殺到したりすることが考えられます。

水、電気、人員、医療資器材などを確保し、必要に応じ治療の優先度を決めるトリアージを行います。

04.3オフィスビル

事業活動を止めず、勤務や来訪者の安全を守る準備が必要です。設計の段階で高い耐震性能や制振構造、帰宅困難者の一時受け入れや災害情報を受発信する連絡設備などが求められます。

垂直避難の防災拠点となるように、断水時でもトイレやエレベーターが使えるように自家発電設備を備えたり、非常用食糧や医療品、工具などを備蓄したりしておきましょう。

04.4旅館・ホテル

ホテルや旅館などの宿泊施設は、もともと建築基準法や消防法によりさまざまな規制を受けています。災害時に重要なのは宿泊客の安全確保です。夜間など従業員が少ない場合でも避難できるよう避難経路や安否確認、連絡方法を明確化しておきます。

宿泊客が安全に帰宅できるように、旅行代理店や近隣の宿泊先などと連携して受け入れの調整を行う必要があります。必要に応じ予約客への連絡や工法の準備も実施します。

04.5学校

安全確保のため、在校時だけでなく校外時(校外学習・宿泊学習・修学旅行等)や休日、夜間、通学バス利用時など、生徒や教職員がすごす場面ごとに教職員がとるべき指示や行動を定めておきます。

学校は避難所を開設する場合があるため、児童や生徒の引き渡しや消火・点検・復旧に加えて救護や食糧の提供など避難所の支援も必要です。

04.6マンション

構造躯体に損傷がなくても、ドアが開かない、エレベーター、機械式駐車場が動かない、水が使えないなどの不具合が生じる場合があります。

まず閉じ込められている人やけが人がいないかを確認し、水漏れや破損、危険個所の確認を行います。住民の安否確認をはじめ子ども、高齢者のケア、トイレ、自炊のサポートも必要です。

初期消火や電気・ガス・水道の元栓を締めるなどの初期対応は住民個人で対応せざるを得ないため、事前にマンションの災害対応組織や役割を住民とともに共有しておくこともBCP対策のひとつです。

04.7工場

構造躯体に損傷がなくても、ドアが開かない、エレベーター、機械式駐車場が動かない、水が使えないなどの不具合が生じる場合があります。

緊急事態の際に事業継続性を確保するためには、危険個所の把握と対策、商品、資機材やサーバー・OA機器の転倒・落下防止、ガラスの飛散防止、備蓄などが必要です。

重要な取引先を洗い出し、有事にも優先的に供給ができるように調達先や金型、生産情報の共有を行う、日ごろから宿泊先を確保して、遠方から応援協力をしあうなどの対策が行えます。

05.まとめ

BCP対策は経営方針の延長にあるもので、BCP対策を検討することが業務改善につながる場合もあります。BCP対策はいちど作って終わりではなく、通常の業務と同じくPDCAを回して改善し続けていくことが重要です。都度見直すことで災害時のリスクを下げる余地が生まれます。

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