2024.05.29

省エネ法の目的・考え方とは? 求められる報告書の種類と具体的な対策案を解説

省エネ法(正式名称:エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)は、エネルギー資源の有効利用を目的に定められた法律です。工場、輸送、建築物など(業務部門と家庭部門)に対して、省エネ化を促進させる内容が制定されています。

この記事では、省エネ法の目的や考え方について詳しく解説します。省エネ法に対しての具体的な対策案も解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

1 省エネ法の目的とは

1.1 省エネ法の目的

省エネ法の目的は、エネルギー使用の合理化に関する措置を講じ、エネルギーの有効利用を確保することです。省エネ法に該当するエネルギーは、燃料・熱・電気の3つに分類されています。詳しくは、以下の表のとおりです。

燃料

 

・原油

・ガソリン

・重油

・その他石油製品(ナフサ、灯油、石油アスファルト、石油コークス、石

油ガスなど)

・可燃性天然ガス

・石炭

・コークス

・その他石炭製品(コールタール、コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス)

・燃焼その他の用途に供するもの(燃料電池による発電など) 

 

上記燃料を熱源とする熱(太陽光や地熱などは対象外)
電気 上記燃料を熱源とする電気(太陽光発電や風力発電などは対象外)

省エネ法によるエネルギー使用者への規制は、直接規制・関節間接規制の2つに分けられます。直接規制は、工場・事業場・運輸分野が該当します。
一方で、エネルギー使用者への間接規制は、機械器具(自動車・家電製品や建材など)の製造・輸入事業者などが対象です。

省エネ法の規制について、詳しくはこちらのページをご覧ください。

省エネ法の規制について解説

1.2 省エネ法で求められている報告書の種類

省エネ法で求められる報告内容の種類は、大きくわけて以下の5つです。

事業者の基本情報

事業所名や住所、事業内容などを記載する

エネルギーの使用量 自社で使用しているエネルギー量と種類などを記載する。令和4年の法改正によって原子力や再生可能エネルギーの使用量も含める必要がある。
省エネ活動の詳細 具体的に行った省エネ活動について記載する。
省エネ活動の実績 省エネに関する取り組みによってどれくらいの成果を得られたのか示す。
今後の取り組みや計画 省エネの改善がみられなかった場合、改善できない理由や今後の改善計画などを記載する。

表をみると、報告(定期報告)の中で記載する内容には、いくつかの種類があることがわかります。

株式会社エスコでは、定期報告書の作成支援サービスをおこなっております。お気軽に弊社までお問い合わせください。

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2 省エネ法で対象の企業

省エネ法では、エネルギー使用者への直接規制・間接規制の内容などが定められていますが、具体的にどのような企業が対象となるのでしょうか。ここでは、省エネ法で対象となる企業について詳しく解説します。

2.1 対象となる企業

省エネ法の対象者(企業)は、以下の通りです。

  • 工場などの設置者
  • 貨物・旅客輸送事業者
  • 荷主
  • 機械器具(自動車、家電製品や建材等)の製造または輸入事業者
  • 家電などの小売事業者やエネルギー小売事業者

中でも、報告義務などの対象に該当するのは「特定事業者」「特定貨物・旅客運用者」「特定荷主」です。自社が省エネ法の対象となるのかどうか、一度確認してみましょう。

3 省エネ法の考え方

省エネ法の考え方をまとめると、大きく以下の3つです。

  • エネルギーの使用を合理化へ
  • 非化石エネルギーへの転換を
  • 電気の需要の最適化へ

それぞれの内容について詳しく解説します。

3.1 エネルギーの使用を合理化へ

出典:経済産業省 資源エネルギー庁|省エネ法の改正(令和4年度)改正省エネ法のポイント​

これまでの省エネ法では、化石エネルギーに対してエネルギー使用の合理化を求めていました。ただし、2023年の省エネ法の改正によって、化石エネルギー・非化石エネルギーの両方でエネルギーの使用の合理化が求められています。

3.2 非化石エネルギーへの転換を

出典:経済産業省 資源エネルギー庁|省エネ法の改正(令和4年度)改正省エネ法のポイント​

省エネ法では特定事業者などに対して、非化石エネルギーへの転換目標に関する中長期計画書の作成・非化石エネルギーの使用状況などの定期報告を国に行うことが定められています。2050年のカーボンニュートラル(二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの排出量を全体的にゼロとすること)実現に向けての考え方です。

3.3 電気の需要の最適化へ

出典:経済産業省 資源エネルギー庁|省エネ法の改正(令和4年度)改正省エネ法のポイント​

省エネ法では、特定事業者に対して「上げDR(再エネ余剰時等に電力需要を増加させる)」「下げDR(電力需給ひっ迫時に電力需要を抑制させる)」の実績報告も定められています。

上げDR・下げDRによる実績報告は、再生可能エネルギー出力制御時の電力の需要シフトや電力の需要・供給ひっ迫時の電力の需要減少を促すことも目的としたものです。

4 省エネ法に対応しなかった場合は 

もし、省エネ法に対応しなかった場合はどうなるのでしょうか。ここでは、省エネ法に関しての取り組みを行っているか判別するための制度や対応しなかった際のペナルティに関してご紹介します。

4.1 SABC制度とチェック制度

出典:経済産業省 資源エネルギー庁|事業者クラス分け評価制度

SABC制度とは、事業者から提出された定期報告書の内容に基づき、S(優良事業者)・A(更なる努力が期待される事業者)・B(停滞事業者)・Cクラス(要注意事業者)にクラス分けする評価制度のことです。

Sクラスになると優良事業者として、経済産業省のホームページに公表されます。Bクラスの事業者に対しては、報告徴収・立入検査・工場等現地調査が行われる場合があります。調査の結果、判断基準遵守状況が不十分と判断されると、Cクラスに分類されるのが特徴です。

行政によるチェック制度のもと、省エネ法に対応するよう取り組みが促されています。

4.2 ランキング制度

経済産業省が設置する「エネルギー小売事業者の省エネガイドライン検討会」での議論を踏まえ、省エネに関する一般消費者向けの情報提供やサービスの充実度を調査し、取り組み状況を評価する制度のことです。ランキングは、事業者のエネルギーの種類によって異なります。

事業者の分布は、以下の通りです。

  • 小売電気事業者
  • 都市ガス小売事業者
  • LPガス小売事業者

経済産業省 資源エネルギー庁では、星5評価を獲得した事業者の取組事例が公表されています。必要に応じてチェックしてみるとよいでしょう。

4.3 ペナルティ

省エネ法で定められているにも関わらず、届出書などを提出しないと罰金が適用される可能性があります。主な罰則の例は、以下の通りです。

項目 罰金
エネルギー使用状況届出書 ・届出をしなかった場合、虚偽の届出をした場合:50万円以下の罰金
定期報告書、中長期計画書 ・提出をしなかった場合、虚偽の報告をした場合:50万円以下の罰金
エネルギー管理統括者、エネルギー管理企画推進者、エネルギー管理者、エネルギー管理員 ・選任しなかった場合:100万円以下の罰金

ペナルティを課せられないためにも、省エネ法に基づいた行動を取りましょう。

5 具体的にできる対策案は

省エネ法に対して具体的にできる対策案がどのようなものか気になる方もいるのではないでしょうか。ここでは、具体的にできる対策案について3つご紹介します。

5.1 対策ポイント:運用改善の実施検討

まずは、現在設置されてある設備の運用改善を実施・検討してみましょう。例えば、空調の運転方法の見直し・熱回収型空調の導入などによってエネルギーの効率化が図れます。

空調を適切な設定温度にすることを心がけて余分な消費電力を節約したり、こまめな消灯によって照明の無駄づかいなどを減らすのも効果的です。

5.2 対策ポイント:省エネ設備の導入

既存の設備の更新を実施・検討してみるのも1つの方法です。省エネ性能に優れた空調・照明などを導入することで余分な電力の節約につながります。

例えば、照明のLED化などが挙げられます。LED照明は、従来の照明と比較して省エネ性能に優れており、寿命が長いのが特徴です。交換にかかる余分な時間を減らしつつ、省エネ化を目指せます。

5.3 対策ポイント:再エネの導入の検討

再生可能エネルギーの導入を実施・検討してみることも効果的な方法です。化石燃料の使用量を削減することで、企業のイメージアップにもつながります。

太陽光発電や風力発電などを導入し、省エネ法の基準を達成することで、企業の経営効率向上や環境負荷低減にもつながるでしょう。新たなビジネスチャンスの創出にもつながる可能性があるため、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

 

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