2025.07.29

感震ブレーカーとは?必要性やマンションの通電火災対策について解説

日本列島に暮らす私たちは、いつどこで大地震に見舞われるか予測できません。阪神・淡路大震災や東日本大震災といった過去の大規模地震では、多くの尊い命が失われ、街は壊滅的な被害を受けました。地震そのものによる被害だけでなく、その後に発生する火災も大きな脅威となります。特に、電気に起因する火災は、地震時の火災原因の6割以上を占めており、対策の有無は大きな影響を与えます。

中でも、多くの人々が暮らすマンションでは、一室から発生した火災が建物全体に影響を及ぼすリスクもゼロではありません。安心して暮らせるはずのマイホームや大切な資産を、電気火災からどのように守れば良いのでしょうか。

そこで注目されているのが、「感震ブレーカー」です。地震発生時に電気の供給を自動で遮断するこの装置は、電気火災、特に通電火災を防ぐ上で非常に有効な手段とされています。しかし、マンションへの導入には様々な課題があるのも事実です。

この記事では、「感震ブレーカーとは何か」から始め、マンションにおける電気火災のリスクと、その対策としての感震ブレーカーの重要性について詳しく解説します。そして、エスコがどのようにこれらの課題を解決し、マンションにおける感震ブレーカーの普及に尽力しているのか、その強みと独自の取り組みを余すところなくご紹介します。ぜひ最後までお読みいただき、地震対策の第一歩を踏み出すきっかけとしてください。

エスコの感震ブレーカー

1.感震ブレーカーとは?地震から電気火災を防ぐ仕組み

感震ブレーカーの仕組みと役割はどのようなものなのでしょうか。
地震時に発生する電気火災に対して、どのように役立てられるのか見ていきましょう。

1.1.地震時に発生する恐ろしい電気火災

地震による火災には、大きく分けて二つの種類があります。

1 地震発生直後の火災
建物の倒壊や家具・家電の転倒により、電気配線がショートしたり、熱を持つ機器が可燃物に接触したりして発生する火災です。

2 通電火災
地震による停電から電気が復旧した際に発生する火災です。転倒した電気ストーブや破損した電気機器に通電したり、損傷した配線がショートしたりすることで出火します。阪神・淡路大震災では、原因特定がされた火災のうち、通電火災が多く発生したことが報告されています。無人となった室内で発生することが多いため発見が遅れ、延焼しやすいのが特徴のひとつです。

一般的なブレーカーは漏電時には作動しますが、地震による火災、特に通電火災には効果を発揮することができません。感震ブレーカーは、こうした地震時の電気火災、特に復旧後の通電火災を防止するための装置なのです。

1.2.感震ブレーカーの仕組み

感震ブレーカーの仕組みを簡単に説明すると、震度5強以上の揺れを感知すると、自動的に電気の供給を遮断する、というものです
その具体的な動作は、まず震度5強以上の揺れを感知すると警報を発動。約3分後に分電盤の主幹ブレーカーを強制的に落とし、電気を遮断します。もし地震感知から3分以内に停電が発生した場合は、電気が復旧した直後に主幹ブレーカーを落とすことで、通電火災を未然に防ぎます。

このように、感震ブレーカーは地震発生後の電気火災を防ぐための「命綱」とも言える装置なのです。各家庭に設置することで、住宅火災を防ぐだけでなく、地域全体での延焼防止にも繋がります。また、地震発生時に慌ててブレーカーを操作する必要がなく、避難行動に集中できるというメリットや、外出中に地震が起きても自動で遮断されるという安心感も得られます。

1.3.国も推奨する感震ブレーカーの設置

国も感震ブレーカーの普及を推奨しており、内閣府の検討会で定められた基準を満たした装置の導入が進められています。内線規程も2019年に改定され、地震時の電気火災の危険性が高い地域や、防火地域・準防火地域の木造・鉄骨造の住宅などには「勧告」、それ以外の住宅などにも「推奨」が位置付けられています。
いつ起こるか分からない大規模地震に備えるため、感震ブレーカーの設置は今や非常に重要な防災対策と言えます。

2.感震ブレーカーのメリットとデメリット

2.1.感震ブレーカーを設置するメリット

感震ブレーカーを設置する最大のメリットは、地震発生時に電気に起因する火災、すなわち通電火災のリスクを大幅に低減できる点です。

地震の強い揺れを感知すると自動的に電気を遮断するため、地震の揺れによって損傷した配線や転倒した電気機器からの出火を防ぐことができます。また、地震後の停電から電力が復旧した際に発生する通電火災も防止できます。

特に地震発生時に自宅を離れていた場合や、揺れが大きくブレーカーを自身で操作する余裕がない場合でも、電気火災のリスクを抑えることが可能です。早期の電気遮断は、火災の発生だけでなく、初期消火の可能性を高め、延焼拡大を防ぐ上でも有効です。

2.2.感震ブレーカーのデメリット

感震ブレーカーにはいくつかの懸念点も存在します。

まず、地震以外の大きな揺れ、例えば大型車両の通行による振動などで誤作動し、停電してしまう可能性が指摘されています。また、夜間に地震が発生し感震ブレーカーが作動した場合、突然室内が真っ暗になり、避難の妨げになることも考えられます。

さらに、一度遮断された電気の復旧は手動でおこなう必要があるため、安全確認なしに通電してしまうリスクもゼロではありません。

これらのデメリットへの対策として、

・誤作動の少ない精度の高い製品を選ぶこと
・停電時でも点灯する足元灯や懐中電灯をあらかじめ備えておくこと
・復旧の際には、電気機器の安全確認を怠らないようにすること

などが重要です。

2.3.感震ブレーカーの種類

感震ブレーカーには、主に以下の3種類があります。

・分電盤タイプ
・コンセントタイプ
・簡易タイプ

2.3.1.分電盤タイプ

上記でご説明した感震ブレーカーの仕組みは、分電盤タイプの仕組みです。

分電盤タイプには、分電盤に内蔵されているタイプと、後から設置する後付けタイプがあります。内蔵タイプは分電盤に組み込まれており、既存の分電盤と比較してもスペースが変わらないのが魅力です。後付けタイプは、設置条件が製品によって異なる場合があります。

分電盤タイプは、感震性能が高く、誤作動が少ないとされています。分電盤に設置するため、家全体の電気を遮断でき、広範囲の通電火災リスクを低減するのに役立ちます。

エスコの感震ブレーカー

2.3.2.コンセントタイプ

電気工事が必要なものと、コンセントに差し込むだけのものがあります。
内蔵されたセンサーが揺れを感知し、コンセントから電気を遮断してくれます。

部分的な遮断になりますので、火災リスクの高い特定の家電製品の電源のみの遮断には効果的です。

2.3.3.簡易タイプ

分電盤にばねやおもりを設置し、地震の揺れで落下することでブレーカーを遮断させる器具です。
電気工事は不要ですが、動作の信頼性にはばらつきがあり、まさに簡易的なものになります。

地震以外の揺れや衝撃でも誤作動を起こしやすいですが、もっとも安価な選択肢です。

3.なぜマンションに感震ブレーカーが必要なのか?特有の課題とは

なぜ特にマンションにおいてその必要性が叫ばれているのでしょうか。そして、マンション特有の普及における課題とは何でしょうか。

3.1.マンションにおける電気火災リスク

マンションは、多くの世帯が一つの建物に集まって暮らしています。構造上、一室で発生した火災がすぐに建物全体に延焼する可能性は低いとされていますが、煙や一酸化炭素中毒などによる深刻な二次災害で人命に影響が及ぶ懸念は十分にあります。
また、たとえ小規模な火災であっても、建物の共用設備に被害が及べば、エレベーターや給排水設備が停止するなど、居住者全体の生活に大きな支障をきたす可能性があります。

3.2.「全戸一括導入」の理想と「合意形成」の壁

株式会社エスコが感震ブレーカーの普及において最も重要視しているのは、「全戸一括での導入」です。例えば、未導入住戸から電気火災が発生した場合でも、二次災害のリスクは残ってしまいます。そのため、全戸導入こそが理想形だと考えています。

しかし、分譲マンションの場合、専有部分への工事には居住者全員の合意形成が不可欠となります。特別決議が必要となる場合もあり、全員の合意を得ることは非常に難しく、数年検討を重ねる必要があり、時間を要してしまうことが大きな課題です。

また、感震ブレーカーの設置費用を管理組合の修繕会計から支出する場合、物価高騰などにより修繕会計が逼迫しているケースも多く、電気設備以外にも更新が必要な設備があるため、予算確保が難しいという財政的な問題も導入の妨げとなることがあります。

3.3.見過ごせない「古い分電盤」の劣化リスク

感震ブレーカーの導入を検討する際に、あわせて考えなければならないもう一つの大きな課題が、既存のホーム分電盤の劣化です。

日本電機工業会は、家庭で使用されるホーム分電盤の交換推奨年数を13年と定めています。

しかし実際には、50年以上継続使用されているケースも少なくありません。古い分電盤は、ブレーカーが正常に作動しなくなる可能性が高まり、漏電ブレーカーが作動せずに火災に繋がる恐れがあります。また、異常電圧が流れることで家電製品の故障や、電気製品からの発火に繋がるリスクも高まります。

分電盤の交換目安については、下記記事に解説されているのであわせてご覧ください。

分電盤の交換目安について解説!

3.4.感震ブレーカーをめぐる、二つの課題の解決にむけて

マンションにおける感震ブレーカーの「全戸一括導入」「ホーム分電盤の定期更新」という二つの大きな課題は、互いに背反する側面を持っています。

感震ブレーカーの全戸一括導入促進
居住者間の議論と合意形成に時間を要するため、結果としてホーム分電盤の更新が遅れてしまう可能性があります。

ホーム分電盤の定期更新促進
各戸が個別に分電盤を更新することは進みますが、それぞれの価値観や予算に応じておこなうため、感震ブレーカーの一括導入の機運を妨げる可能性があります。


これらの問題は、居住者一人ひとりの価値観によって優先順位が異なるため、画一的に解決することは容易ではありません。
株式会社エスコでは、マンション特有の複雑な課題に対し、単に製品を販売するだけでなく、マンション全体、そして各居住者の「安全・安心」を実現するため、多角的にアプローチし続けています。

エスコの感震ブレーカー

4.多様な課題に対応するエスコ独自の解決アプローチ

エスコは、2016年頃より感震ブレーカーの普及促進活動を開始し、「マンションから通電火災をなくす」を合言葉に、これまで4万戸以上に感震ブレーカーを設置してまいりました。
前述したマンション特有の課題(合意形成の難しさ、財政的な問題、分電盤の劣化)に対し、エスコでは、下記のような対策を進めております。

1 コスト削減案のご提案

エスコは、感震ブレーカーだけではなく、省エネ設備導入や、コスト削減施策、保安点検などをワンストップでご提案させていただくことが可能です。それらを組み合わせることで、多角的なコスト削減を実現、導入費用捻出のハードルを下げるお手伝いが可能です。

2 共用部分電盤の無料診断サービス

「予防保全が大事」と頭では分かっていても、本当にそれが必要なのか、目で見て確かめないと納得しにくいものです。そこで、エスコでは共用部分電盤を直接確認し、レポートを作成します。劣化を「見える化」するだけで、居住者の皆さまにとって予防保全が身近な問題に感じていただきやすくなります。丁寧にご説明をおこない、予防保全についての「あるべき姿」を描けるようにお手伝いをしております。

3 柔軟な個別対応提案

全戸一括導入が理想である一方、合意形成の難しさから実現が難しいケースが多いのが実情です。
そこでエスコは、マンション居住者の価値観に応じた方策の一つとして、個別でのホーム分電盤改修スキームを新たに構築しました。
共用部分電盤改修にともなう啓蒙活動などでホーム分電盤改修への認知度を高めた上で、マンション全体や各居住者様の意識を「見える化」することから始めます。
お客様の個別のニーズにも答えることで、一戸でも多くのマンションのレジリエンス性向上に貢献しようとしています。


もちろん、単に分電盤を交換するだけではなく、最新の法改正に対応した仕様や、近年増加している落雷被害対策としてSPD(Surge Protective Device:避雷器)機能などさまざまな機能を追加提供することで、設備保全と災害対策の両立を実現します。

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5.国土強靭化への貢献が認められた「レジリエンスアワード」連続受賞

分譲マンション専有部への感震ブレーカー導入事業に注力してきたエスコの取り組みは、国土強靭化計画の実現に貢献するものとして高く評価されています。

エスコは、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会が主催する「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)」において、2021年より4年連続で「優秀賞」を受賞しています。さらに、5年目となる第11回アワードでは「最優秀賞」を受賞しました。

これらの受賞は、単に感震ブレーカーを普及させただけでなく、マンションにおけるさまざまなボトルネックを解消するためのエスコの独自の取り組みが評価された結果です。

  • 第8回優秀賞: 感震センサー型の開発など製品企画、施工ガイドライン確立といった「内的ボトルネック」解消による全国対応化と工事品質向上。
  • 第9回優秀賞: 管理組合が抱える財政難や合意形成困難といった「外的ボトルネック」解決への提案。
  • 第10回優秀賞: 感震ブレーカーに加え、電気的基幹設備である引込開閉器盤を中心とした共用部分電盤の更新提案による更なるレジリエンス性能強化。
  • 第11回最優秀賞: 合意形成の壁により感震ブレーカー導入に至らなかったマンションに対し、ホーム分電盤の劣化リスク啓蒙と改修促進の中で、感震機能や避雷器機能を追加提供した取り組み。
    これはまさに、二つの課題の「背反性」を乗り越え、居住者の価値観に応じた現実的な解決策を提供したことが高く評価された証といえます。

エスコの取り組みは、製品・技術開発から、マンションの財政や合意形成といった運営面、さらには居住者一人ひとりの安全意識向上まで、多岐にわたる課題解決を目指す総合力が強みであり、それが高い評価につながっています。

6.まとめ:マンションの電気火災対策はエスコにお任せください

いつ起こるか分からない大地震に備え、通電火災から大切な住まいと家族を守るために、感震ブレーカーの設置は非常に有効な手段です。特に多くの人が集まるマンションでは、一室の対策が建物全体の安全に繋がります。

エスコは、「マンションから通電火災をなくす」という強い使命感のもと、長年培ってきた電気設備に関する専門知識と技術力、そしてマンション特有の課題を深く理解した独自の解決アプローチで、多くのマンションで感震ブレーカーの普及を実現してきました。

感震ブレーカー設置だけでなく、古い分電盤の更新、落雷対策(SPD)、避雷針維持管理、非常用発電機・蓄電池 といった幅広いレジリエンス強化・設備保全のサービスを提供しており、マンションの安全と価値向上をトータルでサポートすることが可能です。

「世界中の『負と不』が 『プラス』に変わる」というビジョン のもと、エスコはマンションの安全に関するさまざまな「負」と「不」を解消し、安心できる未来を創造するお手伝いをしたいと考えています。

マンションの電気火災対策や電気設備の老朽化にお悩みの方は、ぜひお気軽にエスコにご相談ください。

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