2025.11.07
BCP対策とは?策定のポイントや事例、設備について紹介
BCP(BusinessContinuityPlan:事業継続計画)とは、企業が予期せぬ事態に直面した際に事業を継続、または早期復旧させるための重要な計画です。
近年、サイバー攻撃や自然災害など、企業にとって甚大な影響を与える危機が、避けては通れない課題となっています。また、2024年4月には介護施設などの介護業界においてBCP対策が義務化され、ますます関心が高まってきています。
そこで本記事では、BCP対策の基本的な考え方だけではなく、その定義や目的、さらには防災計画やBCMとの違いについて解説します。
INDEX
01.BCP(事業継続計画)対策とは
BCP対策とは何かについて解説します。
01.1.BCP(事業継続計画)の定義と目的

BCP(Business Continuity Plan)は、日本語では事業継続計画と訳されます。これは、企業が自然災害、システム障害、サイバー攻撃、感染症の拡大、テロといった不測の事態に直面した際に、損害を最小限に抑えつつ、主要な事業活動を継続または早期に復旧させるための方針、体制、手順などを定めた計画です。
企業が直面しうる不測の事態を挙げると、下記のようにさまざまなものがあります。
・自然災害
・感染症
・テロ
・火災
・有害物質の流出
・リコール
・システム障害
・セキュリティ侵害
・法令違反
・病気・けがなどによる社員、経営陣の離脱

BCP対策の主な目的は、緊急時に企業が倒産や事業縮小に追い込まれるのを防ぎ、早期復旧に向けて迅速に対応できる体制を構築することにあります。
また、あらかじめ緊急時の対応を決めておくことで、混乱や誤った行動を防ぎ、従業員の安全確保にもつながります。企業のリスクマネジメントにおいて非常に重要な位置を占めるのがBCP対策です。
01.2.事業継続計画(BCP)の重要性
BCPは、緊急時に事業資産の損害を最小限に抑え、中核となる事業を継続または早期に復旧させるために不可欠な計画です。
BCPの重要性が注目されている理由として、組織を取り巻くリスクが多様化してきたこと、そしてその影響が甚大であることが挙げられます。
最近では、アサヒグループホールディングス株式会社やアスクル株式会社などが大規模なサイバー攻撃を受け、システム障害に陥り、大きなダメージを受けました。
また、自然災害も増加、しかも大規模化してきております。
例えば、降水量を100年単位で比較してみましょう。
内閣府のデータによると、全国的に大雨や短時間強雨の発生頻度も増加しており、日降水量100mm以上及び200mm以上の日数は、この100年でともに増加傾向が見られます。

また、1970年代後半から多くの地点で観測を開始したアメダスにおいては、おおよそ50年間で、1時間降水量50mm以上及び80mm以上の短時間強雨の年間発生回数は、ともに増加していることが分かります。

この背景には、世界の平均気温の上昇が挙げられ、そして同時に海面水温の上昇にも影響してきます。海面水温が上昇すると、一般的には台風の勢力拡大に影響を与えるとされており、台風の被害拡大につながる恐れが指摘されています。
今後もこの傾向は続くと考えられ、自然災害リスクと正面から向き合うことが企業にも求められています。
01.3.事業継続計画(BCP)策定認知の契機
BCP策定の取り組みが加速した契機として、2011年(平成23年)の東日本大震災と、2019年(令和元年)のコロナウイルスのパンデミックが挙げられるでしょう。
01.3.1.地震とBCP
2011年(平成23年)の東日本大震災以降、多くの企業がその重要性を認識し、BCP策定への取り組みが加速しました。

出典:内閣府 防災担当「企業の事業継続の取組に関する実態調査」(平成24年3月)
業種別では、金融・保険業がもっとも策定しており、逆に策定していないのは小売業でした。

出典:内閣府 防災担当「企業の事業継続の取組に関する実態調査」(平成24年3月)
また、全ての企業に対して、企業の本社等が地震防災活動対策強化・推進地域等に指定されている地域に所在しているか否かの地域別に事業継続計画(BCP)の策定状況を調査した結果によると、大規模な地震リスクがある地域ほどBCPの策定が進んでいる傾向が見られます。

出典:内閣府 防災担当「企業の事業継続の取組に関する実態調査」(平成24年3月)
01.3.1.パンデミックとBCP
2019年(令和元年)より数年間は世界中でコロナウイルスの脅威と戦った期間といえるでしょう。
コロナウイルスは、被害の発生はある程度予測はできても、被害の期間の予測は非常に困難でした。そのため、早期復旧を目指す通常の自然災害対策とは異なり、事業を効率的に継続するための対策が必要になりました。
この期間、在宅勤務(リモートワーク)・時差出勤などが主な対策として多くの企業で取り入れられました。
その中で、重要な観点は、継続させる事業と縮小させる事業の選定をおこなうことです。稼働できるリソースが限られてしまう中で、自社にとって何が中核事業なのか、という判断はいざというときに素早く意思決定をするための重要な判断軸となります。

出展:内閣府 防災担当「令和5年度 企業の事業継続及び防災の取組に 関する実態調査 」
2023年度(令和5年度)では、大企業の76.4%、中堅企業の45.5%がBCPを策定しており、その数はコロナ前の2017年度(平成29年度)と比較すると、大企業は12.4%、中堅企業は13.7%も増加しています。
また、同様のパンデミックが再び発生する可能性も否定できません。
その際、迅速に対応できるよう、対策を講じておく必要性が高まっています。
02.事業継続計画(BCP)策定をしないリスクとは
徐々にBCP対策について検討する企業が増えてはいますが、政府はさらに策定率を高めていくことを目指しています。
では、BCP策定を阻んでいる理由はどんなものがあるのでしょうか? そして、対策をしない場合のリスクについても考えていきます。
02.1.BCP策定を阻む障壁とは
BCP策定を阻む障壁は何かを考えてみましょう。
中堅企業において「BCPに対する現場の意識が低い」の割合が4割近くとなり、大企業及びその他企業と比較して高くなっています。
大企業では、部署間の連携を課題に感じている割合が45%もあり、実際に策定する際の調整コストが大きなネックとなっていることがわかります。
また、全ての企業規模において「策定する人手を確保できない」が3割近くと、高い結果でした。

出展:内閣府 防災担当「令和5年度 企業の事業継続及び防災の取組に 関する実態調査 」
つまり、BCP策定を実施しない理由は、人的不足・コミュニケーションコスト・現場の意識にあると考えられます。
02.2.BCP策定をしないリスクとは
主に下記2点のリスクが考えられます。
① 顧客・取引先からの信用失墜
BCP対策をおこなわない場合、災害や不測の事態に適切な対応ができません。
生産体制や、物流がストップしてしまう危険性が高まり、その結果、顧客や取引先からの信頼を一気に失うことになりかねません。
② 現場が混乱
トラブルが起きた際、現場で誰が、何を、どのように対応すればいいのかが分からず混乱する可能性があります。初動が遅れることで被害も拡大し、事業再開にも大きな影響を与えてしまうでしょう。
そして、その間に競合他社に差をつけられてしまう可能性もあります。
03.事業継続計画(BCP)策定のメリット
では、BCP策定のメリットもまとめてみましょう。
BCPを策定している場合と、策定していない場合では、被災によるダメージが異なるばかりか、事業再開までにかかる時間も大きく異なります。

つまり、BCPを策定していれば、重要な業務の優先順位が明確になり、限られたリソースを効率的に活用可能です。また、具体的な復旧手順を事前に用意することで、混乱を抑え、従業員の迅速かつ組織的な行動を促します。さらに、事前の訓練により、実際の危機時のスムーズな対応を可能にし、課題改善を通じて実効性の高い危機管理体制を構築します。
緊急時に役立つのはもちろん平常時にも以下のようなメリットがあります。
・経営の実態把握
在庫管理、顧客管理など平常時の業務プロセスや体制を見直すことができ、予期せぬ事態にも柔軟に対応できる組織体制が構築され、組織全体の危機対応能力が高まります。日常の業務効率化にも大きな影響を与え、組織の競争力も高まることでしょう。
・対外的なイメージ向上
取引先や顧客、投資家などのステークホルダーからの信用向上につながります。顧客からは、安定したサービス提供のイメージを与えることができ、投資家からは、企業価値を高める重要な要素として評価される要因となります。
・競争優位性の確保
BCP対策は、競合他社との差別化要因になる可能性があります。安定したサービスの提供は、サプライチェーンにとっても重要な取引先選別基準となります。
・金銭面のメリット
BCP対策は、助成金や補助金、金利の優遇・融資、保険の優遇などが受けられる可能性を高めてくれます。
株式会社エスコでは、助成金や補助金のサポートもおこなっております。お気軽にお問い合わせください。
04.BCPで検討すべき項目
では、自社でBCPを策定する場合、どのように検討すれば良いのでしょうか。
BCPで求められる本質は、人・モノ・資金・情報が足りなくなる状況の中で、短時間で対応できるようにすることです。

つまり、何が起こりうるのかを考え、そのときにおこなうことを計画として定め、それを実際に実行できるように訓練をするなどして備えることが必要になります。
その観点で考えたときに、重要な軸になるのが下記の3点です。
① 何が起きたのか … 自社の被害や災害による自社の影響
② 何が足りないのか … 人・モノ・資金・情報
③ 何を、いつまでに、だれがやらなければいけないのか
この3点を整理しながら、下記の手順でBCP策定を進めていきましょう。
04.1.STEP1 基本方針の立案
BCP対策を実施するために、まずはその目的を明確にしましょう。経営理念や企業のビジョンなど、企業のスタンスから、自社にとっての骨子となる考え方を明確にしておきましょう。
BCPの策定目的は、「人命の安全確保」「従業員の雇用の維持」「地域経済の活力維持」や「供給責任を果たすこと」など、一般的なものから、各企業の特性に応じてさまざまに設定されます。
04.2.STEP2 重要商品(中核事業)の検討
自社の考え方を整理したら、その考え方に沿って、自社にとって重要商品や事業(中核事業)を特定しましょう。
例えば、平常時の3割程度のリソースしかないと仮定した場合でも続けるべきと判断する事業は何でしょうか。
一般的に優先順位の高い事業は、売上の割合が大きな事業や、人々の生活を支えるインフラに直結するような事業、自社にとって重要な顧客・取引先がいる事業などが挙げられます。
04.3.STEP3 リスクの洗い出し
中核事業を整理したら、そのリスクを洗い出し、その事業インパクトを分析します。

想定できるリスクは、想定できる限りすべて書き出しましょう。たとえば、台風や地震、火災などの災害、コロナウイルスのような伝染病などの流行、事件・事故、サイバー攻撃などによるシステム障害など、さまざまな災害を想定し、その被害をできる限り具体的に洗い出していきましょう。
そして、そのリスクに優先順位をつけ、優先度の高いリスクを絞ってBCPを策定します。その判断軸となるのが①発生頻度、②ビジネスにおけるインパクトです。
そのリスクは、年に数回起きるものなのか、数年に1回程度なのか。そして実際に起きた場合、それは事業にどの程度の損害を与えるものなのか。それらを踏まえてビジネスインパクト分析(BIA)をおこないます。
04.4.STEP4 ビジネスインパクトの整理
ビジネスインパクト分析は、ステークホルダーへ与える影響、自社のブランド価値に与える影響のほか、時間軸で考えることが重要です。
自社の業務の停止状態が許容されるのはどのくらいの時間なのかを踏まえ、業務復旧までの復旧目標時間を定めます。その設定は、時間・業務水準・データ損失量の観点から設定しましょう。
・業務を復旧させるべき時間(目標復旧時間/RTO)
・復旧させる業務の許容できるレベル(目標復旧レベル/RLO)
・損失の許容できるデータ量(目標復旧時点/RPO)
たとえば、製造業での中核事業は、「製品を顧客に届ける」こととなります。その場合、顧客に商品をいつまでに、どのような手段で届けるかという物流の確保が極めて重要な要素となります。したがって、生産ラインの確保は重要ではあるものの、倉庫に十分な在庫がある状況では、新規生産よりも既存在庫の配送を実現するための物流ルートの確保が優先順位で上回る場合があります。
災害時はリソースが限られるため、平常時と同じようにすべての商品やサービスを提供するのは難しいため、基本方針をもとに最も重要な商品またはサービスを選んでおきましょう。
04.5.STEP5 具体的な復旧案を練る
リスクとインパクトの分析をしたら、具体的な復旧案を練ります。
災害発生から、平常時に戻るまでの期間を、3つの段階に分けてそれぞれリソースや設備、指示系統などを細かく計画を立てていきます。
第1段階 被害状況を確認する
まずおこなうことは、被害状況の確認。最優先すべき行動は、従業員の安否確認です。緊急時にどのように情報を連携し、共有するのかを事前に取り決めておきます。
自動で安否確認ができるシステムなどの導入は有効な手段です。従業員の安否状況登録があるまで発信をし続ける機能や、安否状況を自動収集するなど、さまざまな機能をもつアプリやツールがありますので自社にあうものを探してみましょう。
第2段階 代替手段で応急的に対応する
災害が起きたとき、不足している設備や人員を代替できる仕組みを構築しておきましょう。
たとえば、緊急時に人的リソースを確保するための手段としてリモートワークを活用するなど、普段から業務に必要な資材や設備環境など、代替手段の確認をして対策をしていきます。
第3段階 平常業務に戻す復旧作業
被害を受けた部分を復旧し、最終的には平常に戻していく必要があります。
施設や設備などのハードと、サーバーやネットワークなどのソフトの両面での復旧が課題です。
復旧をおこなうためには、普段から、施設やシステムの稼働状況や、データの保護やバックアップなどの対策が不可欠です。
データの復旧は、最近ではクラウドサービスを利用する企業が増えてきています。
特に、第1段階での対応が非常に重要です。
危機発生直後に迅速かつ適切に判断し行動できるよう、わかりやすい指示系統と行動基準を定めておきましょう。念のため、代理責任者は複数名定めることも重要です。
05.BCP対策の意味と役割
BCP対策と混同されやすい考え方として、「防災計画」と「BCM」があります。それぞれどのような意味をもち、どんな役割なのかを考えましょう。
05.1.BCP対策と防災計画の違い

BCP対策と防災計画はどちらも緊急事態への備えですが、その目的と対象範囲に大きな違いがあります。
防災計画の主な目的は、災害を未然に防止し、人命や建物、資産への被害を最小限に抑えることにあります。
一方、BCP対策は、災害だけでなく、サイバー攻撃、テロ、感染症など、事業継続を困難にするあらゆるリスクを想定し、事業の中核となる業務を継続させ、または早期に復旧させることに重点を置いています。
防災計画が主に自然災害を対象とし、物理的被害の軽減に焦点を当てるのに対し、BCPはより広範なリスクに対応し、事業そのものの継続性を確保するという戦略的な視点を持っています。
BCPは、防災計画を包含する形で、事業継続のためのより包括的な取り組みと位置付けられます。
05.2.BCP対策とBCMの違い
BCP(事業継続計画)とBCM(事業継続マネジメント)は密接に関連していますが、それぞれ異なる概念を持っています。
BCPは、災害や緊急事態が発生した際に事業を継続させるための具体的な計画や手順を指します。
これには、重要業務の中断を最小限に抑え、迅速な復旧を実現するための具体的な対策が盛り込まれます。
一方、BCMは、BCPを含む事業継続のための包括的な管理システムであり、計画の策定だけでなく、その導入、運用、評価、見直し、改善といった一連のプロセス全体を指します。
つまり、BCPが「何をすべきか」を定める「計画」であるのに対し、BCMは「それをどう実現し、維持していくか」という「マネジメント」の側面を担っています。
BCMは、経営層が主体となって継続的に取り組むべきものであり、組織全体の危機管理意識の醸成にもつながります。
06.具体的なBCP対策
06.1.災害時における電源の確保

BCP対策のひとつに電源の確保があります。
災害時には電気ガス水道などのインフラが止まることが想定されます。しかし、人命保護や日常生活、事業の継続、復旧には電力が必要です。
非常時に電気を使うためには「発電機を用いる」「平常時に電気を貯めておく蓄電池を使う」の2通りが考えられます。
一般的に大規模震災の場合、電気の復旧にかかる日数は約1週間といわれています。そのため、電源に関わるBCP対策としては、1週間分の照明の確保や通信手段の維持を考慮しておく必要があるのです。
06.2.方法1 非常用発電機の導入
電力の確保は、非常時にとって非常に重要です。
非常用発電機があれば、事業所や工場などの設備を稼働させられるだけではなく、通信設備なども使えるようになるため、効率的に復旧作業に取り組むことができます。
詳しくはこちらをご覧ください。
工場や学校、銀行などでは非常用発電機を持っているケースも多いでしょう。
非常用電源として使えるものには、以下のような種類があります。
・燃料式発電機(石油式、ガス式)
・産業用蓄電池
・EV(電気自動車)を蓄電池として活用
・太陽光発電
・太陽光発電+蓄電池+LPガス(ハイブリッド電源)
また、非常用発電機の導入に、自治体の補助金が適用されるケースもあります。株式会社エスコでは、補助金のサポートもおこなっておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。
06.2.1.非常用発電機の保安点検
非常用発電機を保持していても、非常時に想定どおりに稼働しなければ意味がありません。もしもの時に安心して非常用発電機を使用するためには、定期的な点検は必要不可欠です。
非常用発電機は、電気事業法、消防法、建築基準法などの法令によって点検が定められています。
・電気事業法:すべての電気工作物(常用、非常用発電機を含む)について月次、年次など保安規定をもとにした点検義務
・消防法:機器点検(6ヶ月ごと)、総合点検(1年ごと)の実施、報告義務
・建築基準法:特定行政庁の定めに基づく期間、内容での点検、報告義務
06.2.1.非常用発電機導入のために【用途を明確にする】
事業用の非常用発電機は、性能や導入・維持コストが多岐にわたるため、導入時に考慮すべきポイントを整理することが重要です。
まずは、発電機の「用途」を明確にしましょう。
非常時に、必ずしも通常時と同じ電力を確保する必要はありません。最低でも、BCPの策定時に稼働させると決めた中核事業のシステムを動かすのに必要な最小限の動力があれば十分でしょう。
その際、「ノートパソコンを何台稼働させるか」「その際に必要な電力はいくらか」などを具体的な数字で算出するようにします。
ただし、電子機器は初動時に最も電力を消費するため、通常よりも多めに見積もることが重要です。また、精密機器を扱う場合には、周波数を安定させるインバーター機能があると便利です。

06.2.2.非常用発電機導入のために【設置場所を決定する】
必要な電力をもとに導入する発電機を選びます。
発電機として自家消費型太陽光発電を設置することも可能です。しかし一般的には発電機を据え置く場所の近くに燃料の保管場所を設けると使いやすくなります。
加えて、稼働した場合近隣の騒音にならないかなどの配慮が必要です。使用する機器によっては携帯できる発電機が便利な場合もあります。
06.2.3.非常用発電機導入のために【取得方法の決定】
発電機は購入のほか、レンタルやリースも可能です。それぞれコストが変わるため、目的などにもとづき見積もりましょう。
なお、上記でも触れましたが、各自治体などで助成をおこなっている場合もありますので、一度調べてから詳細を決定したほうがよいでしょう。
06.2.4.非常用発電機導入のために【稼働テストの実施】
いざというときに使えるように、マニュアルなどを使い、普段から定期的に研修をおこない、訓練をしておきましょう。
06.3.方法2 蓄電池の導入
もうひとつの方法は、平常時に電気を貯めておき、非常時にそれを使うというもの。
電池には、放電のみをおこなう使い捨ての一次電池と、放電と充電の両方に対応する二次電池があり、電気を貯めておけるものは
その名の通り「蓄電池」と呼ばれています。
蓄電池は、二次電池を用いて発電された電気を事前に貯めておく仕組み。蓄電池を電力確保のBCP対策とすることも可能です。
蓄電池は多くの種類があり、スマートフォンによく使われているリチウムイオン電池も蓄電池ですし、電気自動車やハイブリッド車に使われているものも蓄電池です。
詳しくは、こちらのページをご覧ください。
07.BCP対策 企業のBCP対策事例
各施設ごとのBPC対策をおこなうにあたり、想定される状況や、対応事例についてご紹介します。
07.1.百貨店・デパート
災害が起きた場合は、商品や陳列棚が倒れて買い物客や従業員がけがをするリスクがあります。また、避難時の転倒や混乱を防ぐことも重要です。
日用品を扱う場合には早急な営業再開と完全復旧が求められます。店舗内や電源が使えない場合には、重要商品を検討しておつりが出にくくなるように価格を調整したり、販売場所やレジを使わずに販売したりなど、営業方法を工夫しましょう。

07.2.病院
病院は、災害発生から3日間が最も混乱しやすい傾向があります。建物が損壊し、人や設備が確保できないなかで治療をおこない、外来・入院の患者の安全を確保しなければなりません。また、帰宅できない外来患者が院内にとどまったり、傷病者が殺到したりすることが考えられます。
水、電気、人員、医療資材などを確保し、必要に応じ治療の優先度を決めるトリアージをおこないます。
07.3.オフィスビル
オフィスビルの場合、できる限り事業活動を止めず、勤務や来訪者の安全を守る準備が必要です。設計の段階で高い耐震性能や制振構造、帰宅困難者の一時受け入れや災害情報を受発信する連絡設備などが求められます。
垂直避難の防災拠点となるように、断水時でもトイレやエレベーターが使えるように自家発電設備を備えたり、非常用食糧や医療品、工具などを備蓄したりしておきましょう。
07.4.旅館・ホテル
ホテルや旅館などの宿泊施設は、もともと建築基準法や消防法によりさまざまな規制を受けています。災害時に重要なのは宿泊客の安全確保です。夜間など従業員が少ない場合でも避難できるよう避難経路や安否確認、連絡方法を明確化しておきます。
宿泊客が安全に帰宅できるように、旅行代理店や近隣の宿泊先などと連携して受け入れの調整をおこなう必要があります。必要に応じ予約客への連絡や工法の準備も実施します。

07.5.学校
安全確保のため、在校時だけでなく校外時(校外学習・宿泊学習・修学旅行等)や休日、夜間、通学バス利用時など、生徒や教職員がすごす場面ごとに教職員がとるべき指示や行動を定めておきます。
学校は避難所を開設する場合があるため、児童や生徒の引き渡しや消火・点検・復旧に加えて救護や食糧の提供など避難所の支援も必要です。
07.6.マンション
構造躯体に損傷がなくても、ドアが開かない、エレベーター、機械式駐車場が動かない、水が使えないなどの不具合が生じる場合があります。
まず閉じ込められている人やけが人がいないかを確認し、水漏れや破損、危険個所の確認を行います。住民の安否確認をはじめ子ども、高齢者のケア、トイレ、自炊のサポートも必要です。
初期消火や電気・ガス・水道の元栓を締めるなどの初期対応は住民個人で対応せざるを得ないため、事前にマンションの災害対応組織や役割を住民とともに共有しておくこともBCP対策のひとつです。

08.まとめ

BCPは、自然災害、サイバー攻撃、パンデミックといった予期せぬ危機から企業を守る、現代に不可欠な経営戦略です。単に被害を避ける「防災計画」ではなく、中核事業を早期に復旧させ、顧客や社会への供給責任を果たすための指針となります。
本記事を通じて、BCPの策定は、緊急時に誰が何をすべきかを明確にし、混乱を防ぐだけでなく、平常時の業務プロセスを見直し、組織全体の危機対応能力と信用を高めるメリットがあることをご理解いただけたでしょう。RTOやRPOといった目標設定を通じて、自社にとって何が本当に重要かを問い直す作業でもあります。
BCPは一度作って終わりではありません。設備投資も含め、継続的な見直しと訓練が、企業を未来のリスクから守り抜く力となります。ぜひ、この知識を活かし、強靭な企業体制の構築にお役立てください。