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2024.09.04
エネルギーマネジメントシステム(EMS)は、エネルギー使用の効率化とコスト削減を目指し、エネルギーの使用状況をリアルタイムで監視し、データを収集・分析することで最適なエネルギー管理を支援するシステムです。EMSは、電力、ガス、熱などの様々なエネルギー源を対象にし、リアルタイムでエネルギー消費を把握・制御することができます。具体的には、エネルギー使用の無駄を排除し、より効率的な機器の運用を支援します。
また、EMSはエネルギーに関するデータを可視化し、照明や空調、設備機器の稼働を制御することにより、使用状況の把握や異常検知が容易になり、トラブルシューティングやメンテナンスの効率化にも寄与します。主に、工場やビルなどで電気の使用状況を最適化するために使われます。最近では、環境問題の深刻化やエネルギーコストの上昇を背景に、企業だけでなく家庭においてもEMSの導入が進んでいます。
エネルギーマネジメントは、エネルギー資源の有効活用とコスト削減だけでなく、環境保護にも大きな影響を与えます。
近年、気候変動や資源の枯渇が深刻化する中で、エネルギーの効率的な利用が求められています。特に企業は、家庭と比較すると多くのエネルギー消費が必要な場合が多く、その対策として太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入を進めている企業も多く見られます。しかし、再生可能エネルギーだけですべてのエネルギーをまかなうことは非常に困難です。
また、ISO 50001や省エネ法など環境法令の遵守が求められるようになり、ますますエネルギーの効率化が必要になってきています。
そこで、施設・建物全体のエネルギー消費を「見える化」させ、現状の資源を活用しながらも、環境への負荷をできる限り少なくできるよう、効率よくエネルギーをマネジメントするEMSが重要になってくるのです。
経済産業省の資料によると、エネルギーマネジメントシステム(EMSの市場規模は、2021年から2028年にかけてCAGR20.8%で成長し、2028年には約39兆円規模に拡大する見込みです。
出典:経済産業省 スマートモビリティ社会の構築に向けた動向について
エネルギーマネジメントシステム(EMS)の仕組みと役割について説明します。
EMSの中核となるのは、
1 計測
2 データの分析
3 最適化
の3つのプロセスです。
まず、工場やオフィスビル、自動車などに設置されたセンサー類が電気、水、ガスなどの消費データを取得します。
次に、これらのデータを解析し、エネルギー使用パターンや効率性、消費の傾向を分析します。
最後に、この分析結果に基づいて最適なエネルギー使用方法を自動的に調整・最適化します。
例えば、ピーク時間帯の電力消費を抑制するために特定の機器の使用を一時的に制御することができます。EMSはエネルギー使用の状況を可視化し、データを蓄積することで、エネルギー管理とコスト削減を実現するだけではなく、将来的なエネルギー戦略の立案にも貢献します。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)は、多様な環境や目的に応じて複数の種類が存在しています。主要なEMSには、BEMS(Building Energy Management System)、HEMS(Home Energy Management System)、FEMS(Factory Energy Management System)、CEMS(Community Energy Management System)があります。ひとつずつ、見ていきましょう。
BEMS(Building Energy Management System)は、商業ビルやオフィスビルなどの建物におけるエネルギー消費を管理するシステムです。
BEMSは、空調、照明、電力設備などのエネルギー使用状況をリアルタイムで監視し、効率的な運用を支援します。また、エネルギー消費のデータを分析することで、運用改善の提案や異常検知をおこない、建物全体のエネルギー効率を向上させます。
詳しくは 用語集 BEMSをご覧ください。
HEMS(Home Energy Management System)は、住宅のエネルギー消費を最適化するためのシステムです。HEMSは家電製品や照明、暖房冷房設備の使用状況をリアルタイムで監視し、家庭の電気代を節約し、エネルギー消費の無駄を削減します。さらに、スマートメーターやセンサーを利用してデータを収集し、その情報を元に最適なエネルギー使用方法を提案します。
また、太陽光発電システムや蓄電池と連携することで、再生可能エネルギーの活用を促進し、環境負荷の軽減にも寄与します。
近年では、スマートスピーカーなどのホームネットワークとIoTデバイスの登場により、HEMSの普及が急速に進んでいます。センサーを使用した照明や空調の自動制御、モバイルデバイスによる外出先からの遠隔操作なども可能で、無駄のないエネルギー消費を実現します。政府は2030年までに全世帯にHEMSを普及させることを目標としています。
詳しくは 用語集 HEMSをご覧ください。
FEMS(Factory Energy Management System)は、主に工場や製造施設におけるエネルギー管理を支援するシステムです。FEMSは生産設備や機器のエネルギー使用状況を詳細に監視し、データを収集・分析することで、機器ごとのエネルギー消費を「見える化」・「制御」し、エネルギー効率を向上させる策を実施します。設備の最適運用、環境負荷の軽減が図れます。
さらに、FEMSは生産計画やサプライチェーンと連動させることで、生産性の向上とエネルギーコストの削減を両立させます。省エネの実現だけでなく、生産効率の向上にも大きく寄与し、工場経営者にとって不可欠なツールといえるでしょう。
詳しくは 用語集 FEMSをご覧ください。
CEMS(Community Energy Management System)は、地域全体のエネルギー使用を最適化するシステムです。
CEMSは地域全体のエネルギー効率を向上させ、環境保護への貢献を目指します。BEMSやHEMS・FEMSによる消費側の需要に対して、電力会社など供給側による発電や電圧の制御も含みます。また、再生可能エネルギーの導入を促進し、地域全体でのエネルギー自給自足を目指す取り組みも支援します。
詳しくは 用語集 CEMSをご覧ください。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入は、多数のメリットをもたらしてくれるでしょう。
大きなメリットは、
1 消費エネルギーの「見える化」
2 非効率な機器の特定と運用の最適化
が挙げられます。
EMSの中でも特に大きなメリットとして挙げられるのが、消費エネルギーの「見える化」です。
EMSを導入していない場合、電気代やガス代といったコストの多寡でしかエネルギー消費を把握できませんが、EMSの導入により、どの設備がどのくらいエネルギーを消費しているかをリアルタイムで可視化することができます。この「見える化」により、どの時間帯にどれだけのエネルギーが消費されているか、どの機器が多くのエネルギーを使っているかエネルギーの使用状況をグラフやデータで直感的に把握できることが可能になります。
また、消費エネルギー量からCO2排出量も算出できるので、環境への効果も具体的に見えるようになります。これにより、エネルギー使用の最適化や省エネルギー対策を策定することができ、具体的なデータに基づくアプローチは無駄なエネルギー消費を削減し、コスト削減にも直結します。
さらに、従業員や家庭内の使用者への意識向上にも繋がり、全体的なエネルギー効率の向上を推進することも期待できるでしょう。
EMSを導入するもう一つの大きなメリットは、非効率な機器の特定と運用の最適化です。
EMSは個々の設備や機器から詳細なエネルギー消費データを収集し、過去のデータと比較、分析することでエネルギー消費が最適化されていない機器や稼働状況を特定します。このデータはメンテナンスに活用でき、機器の稼働効率の低下や消費電力の変化から、老朽化や故障の前兆を判断することも可能です。その結果、適切なメンテナンスや最新の省エネ機器の導入、制御技術の導入といった具体的な対策が講じられます。
さらに、EMSは機器の最適な運用スケジュールの策定機能を持ち、エネルギー使用のピークシフトや需給調整が可能となります。EMSを活用することで、全体のエネルギー効率が向上し、コスト削減のみならず、設備の寿命延長や運用の安定性向上にも寄与します。
EMSの導入は、非効率な機器を特定し、見える化・分かる化・最適化のサイクルを繰り返しながら常に最適なエネルギー運用をおこなうための重要なステップとなります。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入には、多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。
EMSの効果を最大限に引き出すために、課題とその解決方法を把握しましょう。
EMS導入における最も大きな課題の一つは初期コストがかかることです。
また、運用コストも必要になるため、導入前に効率よく運用できるよう試算をおこなうことが重要です。
しかし、これを補う手段として補助金を活用することが可能です。
補助金については、次の段落でまとめます。
EMS導入においてもう一つの大きな課題は、自社の設備にマッチしているシステムの導入が必要な点です。また、それを管理する専門知識は必須になるでしょう。
EMSは高度な技術と専門的な知識を必要とするため、その選定、設定、運用には専門家の協力が欠かせません。導入初期にはシステムの設計や各種機器の配置、データ収集方法など、詳細なプランニングが求められます。施設と機器の仕様がマッチしていない場合、EMS全体を導入しても思った成果が得られないこともあります。
解決するためには、まずはEMSを提供している事業者に相談し、導入が可能か、導入するならどのようなシステムを導入すればよいかを判断すると良いでしょう。
EMSが抽出したデータを最大限活用するためには、設備ごとのデータ分析とその分析結果を運用に反映させる専門知識が必要です。
エネルギー全般と電力に関する知識など幅広い知識とスキルを持つエネルギー管理士などの専門家が、社内にいない場合はEMSを提供している事業者に相談したり、外部の専門コンサルティングサービスを利用したりするなどしましょう。
EMSの導入成功には、従業員への教育・研修も重要な要素です。従業員がEMSを理解し、適切に運用できるようにすることで、システムの効果を最大化できるでしょう。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入には多くの初期コストがともないますが、この課題を軽減するためにさまざまな補助金制度が提供されています。これらの制度を活用することで、導入時の経済的負担が大幅に軽減される可能性があります。
たとえば、経済産業省の「省エネルギー投資促進事業」や、「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」などがあります。
※令和6年度当初予算「先進的省エネルギー投資促進支援事業費」における新規公募枠はありません。
地方自治体でも独自の補助金制度を設けていることが多く、地域独自のエネルギー効率向上施策に対して支援を提供しています。
例えば東京都では、EMSの導入やエネルギー貯留設備の改修をおこなう事業者に対し、必要な費用の一部を助成する「蓄熱槽等を活用したエネルギーマネジメント推進事業」をおこなっています。
東京都地球温暖化防止推進センター 蓄熱槽等を活用したエネルギーマネジメント推進事業
これらの補助金制度を適切に利用することで、EMSの導入がより現実的なものとなります。
申請要件や手続きについては各制度ごとに異なるため、事前に詳細を確認しておきましょう。
また、何から手をつければいいのか、どんな省エネをしたらいいのかお悩みの場合には、専門家の診断を受けるのがよいでしょう。国が診断費用の多くを補助してくれる「省エネクイック診断」では、1設備5,500円で診断を受けることが可能です。
エネルギーの無駄遣いや省エネに繋がるヒントを見つけて、コスト削減につながるような設備の運⽤改善や、コスト削減効果が⾼い⾼効率な設備への更新、および設備更新に活⽤できる補助⾦などについて、各事業所に合わせてご提案が可能です。
エスコでも、省エネクイック診断の実施が可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
また、補助金の採択事例も豊富にございます。省エネについてご不明点があればお気軽にご連絡ください。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)は、エネルギー消費の最適化と効率的な管理を実現するための重要なツールです。エネルギー消費を「見える化」することは、エネルギーコストとCO2排出量の削減に繋がり、特にエネルギー自給率の低い日本にとって必須の技術といえるでしょう。
また、EMSの導入には初期コストや専門知識の必要性が課題となることが多いものの、補助金制度を活用したり、専門家の力を借りたりすることでこれらの課題を克服しやすくなります。政府や自治体による補助金の制度もあるため、この機会にEMS導入を検討してみてはいかがでしょうか。
EMSの導入によって、エネルギー使用の最適化とコスト削減を実現し、持続可能な未来を築くための一歩を踏み出すことができることでしょう。
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